行政書士 労働相談長山オフィス

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パワハラに関するおもな裁判例

会社はパワハラの存在を認識できたとされた事案

【北本共済病院事件】 さいたま地判平成16年9月24日

■事案の概要

Xは同病院に准看護師(男性)として勤務していた。

同病院には男性が5名が勤務しており、Yが一番上の先輩で、Xが一番下の後輩だった。

男性准看護師の間では先輩の言うことが絶対とされ、Yが後輩を服従させる関係にあり、YからXに対し、次のようないじめや嫌がらせがあった。

  • 勤務時間終了後も、Yらの遊びに無理矢理付き合わされたり、Xの学校試験前に朝まで飲み会に付き合わされた。
  • Yの肩もみ、家の掃除、車の洗車などの雑用を一方的に命じられた。
  • Yの個人的な用事のため車の送迎等を命じられた。
  • Xが交際している女性Zと勤務時間外に会おうとすると、Yから仕事だと偽り病院に呼出を受けたり、YがXの携帯電話を無断で使用し、Zにメールを送るなどした。
  • 職員旅行において、YがXに一気飲みを強要し、Xが急性アルコール中毒となった。
  • 忘年会においてYらがXに対し職員旅行におけるアルコール中毒を話題にして「あのとき死んじゃったら良かったんだよ、馬鹿」「うるせえよ、死ねよ」等と発言した。その後も引き続きYらは、病院での仕事中においても、Xに対し何かあると「死ねよ」と告げたり、「殺す」などの文言を含んだ電子メールを送信した。
  • 自殺直前、Xは空になった血液検査を誤って出したところ、Yにしつこく叱責された。
  • 同日の病院外来会議で、空の検体を出したり、Xの様子がおかしいことが話題になったところ、Yはその席で、Xにやる気がない、覚える気がないなどとXを非難した。

 

■判決内容

先輩YのX(Xの遺族)に対する損害賠償

  • 民法709条に基づき、いじめによってXが被った損害を賠償する不法行為責任がある。
  • に対し慰謝料として遺族に対して1.000万円の損害賠償を命じた。

病院のX(Xの遺族)に対する損害賠償

  • 病院は、Xが自殺するかもしれないことについて予見可能であったとまでは認められない。
  • 病院は、いじめを防止できなかったことによってXが被った損害について賠償する責任はあるが、Xが死亡したことによる損害についてまでの賠償責任はない。
  • Xがいじめによって被った精神的苦痛に対する慰謝料のうち500万円の限りにおいて、Aと連帯して損害賠償責任を負うよう命じた。

■本判決の特徴

 YのXに対するいじめ行為が社員旅行や忘年会、会議の席上などで行われていたことから病院がいじめの存在を認識することは可能であり、安全配慮義務違反の債務不履行を負うと判断された。

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使用者の安全配慮義務違反が認められた事案

【長崎・海上自衛隊員自殺事件】

福岡高裁平成20年9月24日判決

■事案の概要

21歳の海上自衛隊員が上官からの継続的な誹謗によりうつ病に罹患し、自殺したとして、同隊員の両親が国に対し慰謝料の支払い等を求めた

■判決要旨

違法性の判断基準

  • 他人に心理的負荷を過度に蓄積させるような行為は原則として違法となるが、その違法性は、平均的な心理的耐性を有する者を基準として客観的に判断される
  • しかし例外として、行為者が、その言動を受ける者の心理的耐性が平均的な者の場合と比較して低いことを知り、又は知り得た場合には、心理的耐性の低い者を基準として、過度に心理的負荷が蓄積したかどうかで違法性を判断する余地がある
  •  したがって、仮に通常そのような言動では心理的負荷が過度に蓄積することはないと考えられるような言動であっても、これを受ける労働者が特別にストレスに弱い事情があり、これを行為者が知っているか、又は知り得たにもかかわらず行った場合には、違法と判断される可能性がある。

使用者の安全配慮義務

  • 使用者は、労働者に対し、業務の遂行に伴う疲労や心理的負荷等が過度に蓄積して労働者の心身の健康を損なうことがないよう注意する義務を負う。
  • 上官は、安全配慮義務の履行補助者であるとして国(使用者)と同様の義務を負っており、上官が安全配慮義務に反した以上、国(使用者)も安全配慮義務違反があるといえる。

​指導中の行為でもパワハラは違法

  • 被害者に対し、継続的に「お前は三曹だろ。三曹らしい仕事をしろよ。」「お前は覚えが悪いな。」「バカかお前は。三曹失格だ。」などと発言していた。
  • 仮に指導目的であったとしても被害者に対し、階級に関する心理的負荷を与え、下級の者や後輩に対する劣等感を不必要に刺激する内容で、相当性を著しく欠き、正当性がなく、違法である。

判決

 国の安全配慮義務違反を認め、被害者の両親に対し合計350万円の慰謝料を支払うよう命じた。

派遣労働者が派遣先でパワハラを受け、派遣先会社への損害賠償が認められた事案

アークレイファクトリー事件

大阪高裁平成25年10月9日判決

■事案の概要

派遣労働者として就労していた原告が、派遣先の従業員らからパワハラを受けたため、被告派遣先会社での派遣就労をやめざるを得なくなったと主張して、被告派遣先会社に対し、不法行為(使用者責任)及び会社自身の不法行為に基づく損害賠償として、慰謝料等の支払いを求めた。

■判決要旨

従業員のパワハラ行為について

  • 従業員らが、作業を指示どおり行っていなかった原告を叱責する際に「殺すぞ」と発言したことについては、監督者は監督を受ける者に叱責、指示等を行う際、適切な言辞を選んでしなければならないという当然の注意義務を負う。
  • 原告の所有する自動車に危害を加えるかのような発言をしたことについては、それが1回だけであれば、違法とならないこともあり得るとしても、被害者が当惑や不快の念を示しているのに繰り返し行う場合には、違法性を帯びる。
  • 本件では、極端な言辞をもってする指導や対応が繰り返されており、従業員らの行為は不法行為にあたる。

派遣先会社の使用者責任

  • パワハラを行っていた従業員らは、会社の上司から被指導や注意、教育を受けたことはなかったと認めている。
  • したがって会社は従業員らの選任・監督について、注意を怠ったとして使用者責任を認めた。

派遣先会社固有の不法行為責任

  • 会社は原告からパワハラの被害申告を受けてから1ヶ月以上後に調査を開始している。
  • その対応は迅速とはいえないものの、当時の会社の認識からすれば、原告の受け止め方の問題とも解する余地があったともいえるため違法とまではいえず、会社固有の不法行為があるとまではいえない。

労働者の態度に起因する過失相殺の有無

  • 原告には、仕事を覚えるのが遅い、即時に報告すべき事項を翌日になって報告した、指示した手順に従わず、勝手な手順で作業を進めるなどのミスや問題を起こすことがあった。
  • しかし、原告の就業態度が横柄で不誠実であるとか、敢えて指示に背いたり、意図的にトラブルを生じさせたとはいえない。
  • したがって従業員らの発言は、原告の就業態度から見て、憤まんを抑えることができず、やむを得ずになされた同情の余地がある発言であったとはいえず、原告の態度を原因とする過失相殺は認められない。

判決

被告会社従業員らの言動は唐突で極端な部分があり、正社員と派遣社員という基本的には反論を許さない支配・被支配の関係の中では不適切であるし、原告が嫌がっているにもかかわらず繰り返されており、社会通念上著しく相当性を欠く。

しかし、被告会社従業員らに強い害意や常時嫌がらせの指向があったわけではなく、態様としても受け止めや個人的な感覚によっては単なる軽口として聞き流すことも不可能ではなく、かつ、多義的な部分も多く含まれている。

不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償として30万円の支払いを命じた。

■本判決の特徴

  • 派遣社員は、たとえ派遣元と契約を結んでいるとしても派遣先会社で勤務する以上、派遣先会社も、使用者責任を負うこと。
  • 被害者の言動に起因する過失相殺については、意図的にトラブルを生じさせるような言動がない限り認められない。

 

参照:厚生労働省「明るい職場応援団」

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