労働相談長山オフィス

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労災申請(請求)

労災(労働災害保険)とは何か?

仕事中の事故が原因で怪我をしたり病気になることは日常的に起こりえます。

特に建設業や製造業などは、その危険性が高く一つの事故が命にかかわる場合もあります。

被災労働者の治療費や生活保障のために労災保険(労働災害保険)制度が設けられています。

労災の種類は2つ

労災保険法が定める「災害」は2種類あります。

①業務災害

 業務上の事由によって負傷、疾病、障害、死亡した場合

②通勤災害

 住居と就業場所(勤務先)との往復や就業場所と他の就業場所への移動中に負傷、疾病、

 障害、死亡した場合

労災保険の種類

労災保険は、被災労働者がケガや病気をした場合の状況に応じて以下のような保険給付が定められています。

  • 1
    療養(補償)給付

     

療養に必要な治療が給付されます。

療養の給付(現物給付)と療養の費用の支給の2種類があります。

治療そのものの給付は、労災病院または労災指定病院で受けることができます。

労働災害の場合は療養補償給付、通勤災害の場合は療養給付と名称が異なります。

通勤災害は事業主の災害補償責任を基礎とするものではないため「補償」という文字が使われていません。

時効

療養の費用については費用を支出した日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年

(療養の給付については直接治療を無償で提供されているため時効は問題とならない)

  • 休業(補償)給付

     

 業務災害、通勤災害によって休業を開始した日の4日目から支給を受けることができます。

 支給を受けるには次の3つのすべてを満たさなければなりません

              Ⅰ、業務災害又は通勤災害によって治療を受けていること

              Ⅱ、当該傷病等によって労働することができないこと

              Ⅲ、賃金を受けていないこと

支給額

 給付基礎日額の80%が支給されます

*給付基礎日額とは算定事由発生日の直前3ヶ月間の賃金の総支給額を日割り計算したもの

時効

賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年

  • 傷病(補償)給付

     

療養開始後、1年6ヶ月を経過した時点で次の要件をすべて満たす場合に支給されます。

 Ⅰ、治療中の傷病がいまだ治ゆ(または症状が固定)するに至っていないこと

 Ⅱ、その傷病の程度が傷病(補償)等級の1~3級に該当すること

*被災者の請求によって支給されるものではなく、労働基準監督署長の決定に基づき支給されます

*要件を満たさない場合は、引き続き療養(補償)給付及び休業(補償)給付が支給されます

支給額
傷病等級 傷病(補償)年金 傷病特別年金 傷病特別支援金
1級 年金

給付基礎日額の

313日分

年金

算定基礎日額の

313日分

一時金 114万円
2級 年金 277日分 年金 277日分 一時金 107万円
3級 年金 245日分 年金 245日分 一時金 100万円
時効

被災者が請求する性質の給付ではないため時効の問題は生じません

  • 障害(補償)給付

     

業務災害、通勤災害による傷病の治療を続けていたが症状が固定し、障害が残った場合に障害の状況に応じて支給されます。

障害の程度に応じて1~14級までに分類され、1~7級は年金が8~14級は一時金が支給されます。

 

支給額

 

障害

等級

年金の

種類

障害(補償)給付 障害特別年金・一時金 障害特別支給金

1級

年金

給付基礎日額の

313日分

年金

算定基礎日額の

313日分

一時金 342万円
2級 年金 277日分 年金 277日分 一時金 320万円
3級 年金 245日分 年金 245日分 一時金 300万円
4級 年金 213日分 年金 213日分 一時金 264万円
5級 年金 184日分 年金 184日分 一時金 225万円
6級 年金 156日分 年金 156日分 一時金 192万円
7級 年金 131日分 年金 131日分 一時金 159万円
8級 一時金 503日分 一時金 503日分 一時金 65万円
9級 一時金 391日分 一時金 391日分 一時金 50万円
10級 一時金 302日分 一時金 302日分 一時金 39万円
11級 一時金 223日分 一時金 223日分 一時金 29万円
12級 一時金 156日分 一時金 156日分 一時金 20万円
13級 一時金 101日分 一時金 101日分 一時金 14万円
14級 一時金 56日分 一時金 56日分 一時金 8万円

*給付基礎日額とは算定事由発生日の直前3ヶ月間の賃金の総支給額を日割り計算したもの

*算定基礎日額とは算定事由発生日の直前1年間の特別賞与(ボーナス)を365日で日割り計算したもの

 

時効

傷病が治ゆした日の翌日から5年

  • 遺族(補償)給付

     

労働者が業務災害、通勤災害によって死亡した場合、遺族に対して支給されます。

遺族として支給を受けるには次の全ての要件を満たさなければなりません。

Ⅰ、労働者が死亡した当時「その収入によって生計を維持していたこと」

Ⅱ、被災労働者の配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹であること

Ⅲ、年齢要件を満たしていること(妻は、年齢要件不要)

支給額

遺族数*1

遺族(補償)年金 遺族特別年金 遺族特別支給金
1人 年金

給付基礎日額の

153日分*2

年金

算定基礎日額の

153日分*2

一時金 300万円
2人 年金 201日分 年金 201日分
3人 年金 223日分 年金 223日分
4人 年金 245日分 年金 245日分

*1 遺族数は受給権者と生計を同じくしている人数をいう

*2 遺族が55歳以上の妻又は一定の障害状態にある妻の場合は175日分

 

時効

被災労働者が亡くなった日の翌日から5年

  • 葬祭料(葬祭給付)

     

労働者の葬儀費用の一部を補填する目的で支給されます。

 

支給額

「被災労働者の給付基礎日額の60日分」と「給付基礎日額30日分に31万5000円を加えた額」を比較して高いほうが支給されます

時効

被災労働者が亡くなった日の翌日から2年

  • 介護(補償)給付

     

 

労働者が介護を受けている場合、その損害の補填を図る目的で支給される。

 次の要件をすべて満たした場合、介護を受けている間、支給される。

Ⅰ、障害補償年金または傷病補償年金を受ける権利を有すること

Ⅱ、その障害が厚生労働省令で定める程度のものにより、常時又は随時介護を要する状態にあること

Ⅲ、常時または随時介護を受けていること

Ⅳ、病院または診療所に入院していないこと

Ⅴ、介護老人保健施設などに入所していないこと

支給額

  ・常時介護を受けている場合

    1ヶ月あたり10万4290円を上限として介護のために支出した費用が支給されます

 ・随時介護を受けている場合

     1ヶ月あたり5万7030円を上限として介護のために支出した費用が支給されます

時効

介護を受けた月の翌月の1日から2年

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労災の認定率

厚生労働省は、労災の支給決定件数について①脳・心臓疾患と②精神障害の2つについてデータを公開しています。

脳・心臓疾患の労災認定状況(平成24年度~平成28年度)

    平成24年 平成25年 平成26年 平成27年 平成28年
  請求件数 842 784 763 795 825
決定件数*1 741 683 637 671 680
認定件数 338 306 277 251 260
認定率*2 45.6% 44.8% 43.5% 37.4% 38.2%

うち被災者が

死亡した場合

請求件数 285 283 242 283 261
決定件数*1 272 290 245 246 253
認定件数 123 133 121 96 107
認定率*2 45.2% 45.9% 49.4% 39.0%

42.3%

千葉労働局管内 請求件数 25 23 30 40 28
決定件数*1 21 16 31 22 26
認定件数 10 13 11
認定率*2 47.6% 81.2% 29.0% 22.7% 42.3%

精神障害の労災補償状況(平成24年度~平成28年度)

    平成24年 平成25年 平成26年 平成27年 平成28年
  請求件数 1257 1409 1456 1515 1586
決定件数*1 1217 1193 1307 1306 1355
認定件数 475 436 497 472 498
認定率*2 39.0% 36.5% 38.0% 36.1% 36.8%

うち被災者が

自殺した場合

請求件数 169 177 213 199 198
決定件数*1 203 157 210 205 176
認定件数 93 63 99 93 84
認定率*2 45.8% 40.1% 47.1% 45.4% 47.7%
千葉労働局管内 請求件数 46 43 46 48 46
決定件数*1 41 47 37 48 30
認定件数 13 19 17 12
認定率*2 21.9% 27.6% 48.7% 35.4% 40.0%

*1 決定件数とは当該年度内に決定した件数、当該年度以前に請求のあったものも含む

*2 認定率は、認定件数÷決定件数×100で算出

労災認定に関する裁判例

渋谷労基署長事件 東京地判 平成21.5.20

 

■事案の概要

  • XはY社において給食事業料理長と新宿第2店員食堂等の店長を兼務していた。
  • 新宿第1店員食堂で勤務する従業員Aは、処遇に不満を持ち、平成9年2月、Xら社員が次の不正行為を行っている旨の内容を含んだ、同社員を中傷するビラを親会社親会社Z社の労働組合に持ち込んだ。

 

  • Y社はXを含む職員らを対象とする調査を行い、不正が認められた職員の一部(Aを含む)に対し懲戒処分を行った。
  • 他方、Xについては、不正行為があったとは認められず懲戒処分はされなかったが、始末書を提出させられ、かつ、兼務していた食堂店長職を解かれた。
  • 平成10年3月、Aは再度、前記と同様のビラを送付して、同問題を蒸し返した。
  • その結果、前回は調査対象とならなかった「Xの部下がZ社の酒売場倉庫のビールを盗み、これをXらが飲んだ」という内容をY社が知るところとなり、Xに対して再び事情聴取が行われた。Xはビール窃取は否定したが職場で酒を飲んだ事実は認めた。
  • Y社はXを給食事業部から、レストラン事業部へ配置転換し、当面はY社直営のイタリアレストランで研修するよう命じた。
  • Xは平成10年4月24日、自宅を出て、配転先店舗に出勤しないまま所在不明となり自殺した。
  • 遺族は、Xの自殺は業務による心理的負荷により精神障害を発病したことが原因であると主張し、労災申請を行ったが渋谷労基署長は不支給決定処分とした。
  •  遺族は、当該不支給決定処分の取消を求め、提訴した。

■判決の内容

  • Xは遅くとも平成10年3月下旬ころには、うつ病を発症していたと認められる。
  • 平成10年3月ころY社E部長等が行った事情聴取は、約2時間にわたり逐一詳細にXに尋ねており、かつ、その質問内容も本件ビラに直接的に記載されていないものにも及んでいる上、その態様も相当に糾問的であったといわざるを得ない。
  • そして、Xは自分が給食事業から外されることを予想しているが、事情聴取時のE部長等の言動により親会社Z社との関係悪化の責任を感じさせられていることからすれば、職種、職場における立場、経験が類似の労働者からみても、そのように受け止めることができるものであったと認めるのが相当である。
  • さらにAが本件ビラをの親会社Z社社長あてに送付したり、家族への脅迫を疑わせる行動をしたことや、本件ビラ問題がY社とZ社の関係悪化の要因になったことは、前記事情聴取と相互に関連するものであって、一体となってXに心理的負荷を与えたと認められる。
  • 厚生労働省通達による「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」【当時の指針】をふまえ検討するとその心理的負荷の総合評価は「特に過重」なものとして「強」であるというのが相当である。
  • したがってXの業務と同人の精神障害の発症及び自殺との間に相当因果関係の存在を肯定することができる。
  • 渋谷労基署長が行った遺族補償給付不支給決定処分を取り消す【労災申請を認める】

 

■本判決の特徴

こういった事態が発生した場合、会社は告発された上司に不手際があったと思い込み、追及姿勢で事実の究明を図ろうとした結果、自殺という最悪の事態が生じました。

会社が部下からの告発に対して事実を究明し、解決を図ることは当然の責務です。

しかし、本件のような部下からの嫌がらせによる告発も有り得るという視点に立って慎重に対応することが重要です。

参照:厚生労働省「あかるい職場の応援団」

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